行進曲「ワシントン・ポスト」
 有名な新聞社「ワシントン・ポスト」の2人のオーナー、ハットンとウィルキンスに依頼されて、アマチュア作家協会の作文表彰式のために作曲されたマーチ。1889年6月15日ワシントン市のスミソニアン・グランドでの表彰式では、ハリソン大統領をはじめ、お歴々が出席される中初演されて、またたく間に有名になった。
 この頃、ツー・ステップ・ダンスが流行しており、その伴奏としてもこの曲はよく使われた。ヨーロッパのいくつかの国では、ツー・ステップ・ダンスのことを「ワシントン・ポスト」とよんだり、この曲の海賊版まで現れた国も多かった。
 「ワシントン・ポスト」は、「星条旗よ永遠なれ」に次いでスーザのマーチの中で最も広く知られた曲である。スーザ・バンドの演奏会では定番曲だったし、この曲がプログラムに載っていない時は、聴衆から演奏するように求められたという……。
 なお、この曲や「忠誠」など、この時期に作られたマーチは、作曲料としてスーザは出版社からわずか35ドルしか受け取っていない。この時期のマーチはどれも人気のある曲が多かったので、後々も彼は苦々しく思っていたらしい。
 今日、ワシントンにある「ワシントン・ポスト・ビル」には「ジョン・フィリップ・スーザ集会室」という部屋があり、黒いひげをはやし、鮮やかな真紅のアメリカ海兵隊の制服を着けた等身大のスーザの肖像画がスポットライトを浴びて飾られている。これは、世界的な名声を勝ち取ってくれた人物に対するワシントン・ポスト社の賛辞である!!