交響詩「ローマの祭」
 オットリーノ・レスピーギ(1879〜1936)は、イタリアの北部の都市ボローニャに生まれた作曲家です。彼は後にローマのサンタ・チェチーリア音楽院の教授になり、同校の院長も務めたことがありますが、終生ローマという都市を愛し、後に「ローマ三部作」と呼ばれる交響詩を作曲します。つまり「ローマの噴水」(1916年)「ローマの松」(1924年)「ローマの祭」(1928年)の3曲です。この3曲のうち「噴水」や「松」に比べて、「祭」の演奏回数はけして多くありません。しかし、それは曲の優劣とは関係なく、むしろ編成の大きさが、演奏の機会を妨げているというべきでしょう。
 さて、交響詩「ローマの祭」は古代から現代に至る4つの祭の様子を描いています。
 1曲目の「チルチェンセス」は古代の祭。
「ローマの円形大劇場での暴君ネロの祭の日、鉄の扉が開いてライオンが放たれ、殉教者たちの歌と猛獣のほえる声が空に混じり合う。興奮した民衆の騒ぎが高まり、殉教者の歌も力を増して、最後は騒ぎの中に消えていく。」群衆のわきたつような興奮と、それをかりたてる力強い金管のファンファーレが曲を盛り上げます。
 2曲目は中世の祭「50年祭」。50年ごとにキリスト教で行われる大赦の祭で、ここではローマを訪れる巡礼の様子が描かれています。
 3曲目の「10月祭」は近世の祭で、ぶどうの収穫を祝う様子を描いている。狩りの様子を表すホルンの旋律や、後半にはマンドリンの優しくロマンチックなセレナーデも聴かれる。
 4曲目は現代の祭「主顕祭」。
「ナヴォナ広場での主顕祭の前夜、特徴のあるトランペットのリズムが騒ぎをかき立てる。田舎風の歌、サルタレロの舞曲、手廻しオルガン、物売りの声、これらによる底抜けの喧騒。そしてその中から人々の“我らはローマ人だ、さぁ道をあけろ”という声が聞こえる。」
曲は狂おしい木管のリズムから始まり、続いて農民の歌やサルタレロに踊り狂う人々、見せ物小屋の手廻しオルガンの音、物売りの声、酔っ払いのだみ声などが見事に描写される、そして民謡風な旋律が高らかに奏されてクライマックスを描き、力強く曲を閉じる。
 レスピーギは、一時期ロシアで管弦楽法の大家リムスキー=コルサコフに師事したことがあるが、この曲のオーケストレーションが大変華麗なのは、明らかにコルサコフの影響であると言えるだろう。
 吹奏楽コンクールでも演奏効果が高いため、よく演奏されるが、オススメは東海大学第四高校、幸田高校、愛知工業大学名電高校といったところか……。最近、佐渡裕指揮のシエナ・ウィンド・オーケストラも録音している。また、オーケストラのCDもたくさん出ているが、派手で熱狂的な演奏が好きならムーティ指揮フィラディルフィア管弦楽団、美しいサウンドでていねいな演奏が聴きたければデュトワ指揮モントリオール交響楽団がオススメ。なお、トロンボーンのソロに関しては、オーマンディ指揮のフィラディルフィア管弦楽団がオススメ。古い録音だが、名手グレン・ダドソンの豪快なソロが聴ける。

部報「ぽこ・あ・ぽこ」249号より